『ももりか/明日はどっちだ』について |
【いるか】は、いつも夢を見ていました。 海の中を泳ぎながら、心は夢の中で世界を飛び回っていました。 とても、幸せでした。 ただ、生きているだけで嬉しくて、今を十分に楽しんでいました。 【いるか】はある日、夢の中で、野に咲く【薔薇】に出会いました。 でも、彼女は厳しい自然の中で、とても苦しそうに見えました。 【つらさが8に、楽しさ2】という感じでした。 でも、ときおり見せる彼女の笑顔はとても魅力的でした。 彼女は厳しい現実と戦っているうちに、夢を見るのを忘れたようでした。 【いるか】は夢の中で彼女に語りかけました。 「今度、いっしょに海の中を散歩しない? 」 「でも、あたし、そんなとこまでどうやっていけばいいか解らないわ」 「大丈夫だよ。目をつぶってごらん」 「こう?」 「それで、頭の中に海を思い浮かべてごらん」 「うん」 「もう、目を開けていいよ」 「ここは…?」 「海の中だよ」 【薔薇】はにっこりと微笑みました。 それからというもの、【薔薇】と【いるか】は夢の中で会っては、海の中をいっしょに泳ぐようになりました。 それはとても楽しい、かけがえのない時間でした。 至福の時、でした。 でも、ある日、【薔薇】は【いるか】に告げました。 「あたし、つらいわ。いるかさんみたいになりたいけど、あたしのからだは大地に根をはやし、何処にもいけなくて、寒くてきびしい冬の風にあたって、今にも倒れてしまいそうなの」 「でも、海の中は楽しいよ」 「だけど、それはしょせん【夢】なのよ。【現実】に戻れば苦しくて苦しくて、もういっそ死んでしまいたいぐらいなの。だけど、あたしがいなくなってしまえば、いつも遊びに来てくれる蝶や蜜蜂さんたちの面倒を見る人がいなくなってしまうのよ。もう、このあたりあった花はすっかり枯れてしまっているの」 「……」 【いるか】は何も言えませんでした。 彼にもつらいことはありましたし、彼女の云いたい事も解らなくもなかった。 だけど、彼は夢の中で世界を飛び回ることによって、とても救われていました。 彼女にもそうして欲しかった。 それでも、【いるか】は泣いてばかりの【薔薇】を慰めたり、夢の中に遊びに連れ出したりします。 いつまでも、寄り添うように側にいました。 【薔薇】は 「あなたはいつも夢ばかりね」 と云います。 【いるか】は「でも、夢は楽しいよ。現実のつらいことも忘れられるし」 【いるか】は想います。 たぶん、【薔薇】には僕の言葉は伝わらないかも知れないと。 一生、解り合えないかも知れない。 とても、せつなくて、つらい。 でも、決してあきらめないでいようと想いました。 もし、生まれ変わったら、ふたりで海の中を泳げるようになったらいいなと、 【いるか】は思いました。 でも、 そんな日はいつになっても来ないかも知れない。 そう想いながらも、【いるか】は今日も【薔薇】にそっと寄り添います。 微笑みながら、泣きながら…。 『ももりか/明日はどっちだ』へ▼ |
【解説】 自分で読み直してみたら、とても恥ずかしい文章でした。
まあ、何かの気の迷いと申しましょうか、こいつ、自己陶酔に陥っ
てるなとか思いながら、照れながらお読み下さい。たぶん、そのう
ち削除するかもしれません。「小説書き」というものは書いている
時は自分に酔わないと書けませんし、同時に冷静な最初の読者でも
あります。まあ、こういうことを「涙を流しながら書ける自分」を
褒めてやりたいものです。ああ、人間って怖いですねぇ(大泣)。
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