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▼ 第4回投稿作品 ▼



 
  旅人さん作『伝説のあかつき部隊〜3人の男の物語〜』


 僕の近所に昔、伝説の「あかつき部隊」の生き残りのおじいちゃんがいました。
 「あかつき部隊」というのは満州事変の時に活躍したらしくて、最後は中国のどこかで全滅したらしいです。
 会社の先輩に聞いたんだけど、どうも映画とかになってるので、結構、有名らしい。

 その全滅した時には、部隊の旗が鉄砲で穴だらけになってしまって、旗の枠だけがひらひらと風になびいたりしたらしい。
 その戦闘がどれだけ凄まじかったか、雄弁に物語っているエピソードだ。
 そんなに激しい戦いだったのにそのおじいちゃんはどうして生き残ったのか、不思議だった。

 おじいちゃんは生き残った後も、二度、戦争に出かけて、この前の戦争の時は、岐阜の大本営で高射砲を撃ってたらしいけど、B29には届かなかったみたい。

 この前、おじいちゃんに聞いてみたんだけど、
「おじいちゃんはどうして生き残れたの?あかつき部隊は、みんな死んでしまったのに、おじいちゃんたち三人だけがなんで生き残ったの?」
「いや、簡単じゃよ。わしは万年、上等兵だったけど、いつも兵隊が隠れる塹壕ばかり掘ってたんじゃ」
「上官が『突撃!』とか云ったら、最初のうちは素直に突撃するんじゃ。そうしないと、逃亡罪で後から撃たれるからなぁ。それからわしたち三人は、様子を伺いながら、その上官が通り過ぎるのを待つ訳じゃ。適当に隠れながらな。上官が完全に追いこして行ったら、三人で特技を生かして穴を掘りはじめるんじゃ。それから、戦いが終わるまでその穴に隠れていれば、生き残れる訳じゃ。ほほほ。簡単じゃろ」
「簡単だね」
「でもなぁ。部隊が全滅したのに、なんでお前達だけが帰つてきたんじゃ!とえらい怒られてなぁ。それ以来、上等兵のままじゃ。でも、他の者は全滅したから、わしらが敵前逃亡したことはわからんから、軍法会議しても証拠がないじゃろ。死人に口なしじゃよ。」
「そうだね」
「それに『あかつき部隊の生き残り』なんで、上等兵だけど陸軍では『猛者』として敬われたしな。上官も怖いのか、命令しないもんで、好き勝手してたよ」
「それいいね」
「それと、二回目、戦争に行った時も部隊が全滅してなぁ。同じ手で切り抜けたんじゃが。流石に三回目は、内地の岐阜の大本営に配属になったよ。陸軍もとうとう、わしらを前線に送っても戦力にならない事がわかったんじゃな。それにこんなことが世間にばれたら、陸軍のスキャンダルじゃろ。結局、最後まで、おとがめはなしじゃったよ。出世もなかったがな。ほほほほほほ」

 おじいちゃんはその後、70才でこの世を去った。
 本当に幸せな人生だったみたい。

 
 注 この物語はノンフィクションらしいです。

      

            1999.9.15






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