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《感想》

haruoさん作『永遠の生命』について



sakazaki−dcです。                       
この『永遠の生命』は、ある意味、聖書SF文学と言えるかもしれない。
それは、小説の形式が聖書の語り、という形式を踏襲しているからであり、聖書に関する相当な教養がないと書けないであろう、と思われるからでもある。

また、そのアイデアも秀逸ではないかと、僕には思える。
ストーリー的には破綻もなく、聖書の記述の背後にある神の意図というものを上手くSF的味付けをして物語を組み立てている。

また、 永遠の生命については、偶然かどうか判らないが、およそ30年後に人間のあらゆる細胞が、遺伝子工学の発達により再生可能になるという未来予測と一致している。
具体的には、遺伝子に刻まれたDNAから直接、細胞の設計図を取り出して再生を行う。その際、情報を伝達するホルモンと呼ばれる化学物質の濃度により
再生できる部位をコントロールするという技術を使用するかも知れない。

すでにこのような技術は、実験により確かめられていて、例えば、濃度が3%なら心臓、5%なら脚の細胞という具合に細胞が形成されることが、実験により判っている。

と、あまり褒めてたばかりいると、小説の技術の向上に繋がらないので、誠に僭越ながら批判もしておく。

この小説を、聖書の語りと捉えずに小説として見るならば、色々な指摘ができるだろう。が、haruoさんに限らず、アマチュアが、一般的に陥りやすい傾向について述べてみる。

例えば、改行が少ないために、WEB上では閲覧しにくいかもしれない。
これは紙の上で、小説を書く時でも同様で、句読点の付け方や、漢字の割合なども重要である。
それだけでも、文章の印象が違ってくる。
小説の内容、書き手の好みもあると思うが、3行程度で改行した方がいいし、
漢字は文章の中でひとつのアクセントとして機能する側面もあるので、一番、強調したい所を漢字にして、後は漢字をなるべく、ひらがなに「ひらく」方がいい。
そうすると、意外と素人臭さが抜けて、ひらがなの部分はすらすらと読めるために大変、読みやすいものになる。プロの小説家はよく読んでみると、強調したい箇所以外はひらがなが多いことに気づくかも知れない。
どうしても漢字のところで視線は止まり、ひらがなでは視線が流れる傾向がある。

この点は小説家の栗本薫、夢枕獏などが参考になる。
特に夢枕氏は、改行が多すぎて原稿料を稼ぐ策略ではないかと疑いたくなるほどで、空白で読ませるという人間ばなれした文才を持っている。
そもそも、氏はタイポグラフィ−小説『カエルの死』でデビューしていて、文字というものをグラフィックとして捉える珍しい作家でもある。
例えば、

  ぴょん
        ぴょん
ぴょこ
ぴょーーーーーーーーーーーーん

 ょ
  こ

という風に、文字の高さによってカエルのジャンプの高さと、滞空時間、ジャンプの距離まで表現している。これで、SFマガジン新人賞を受賞したのだから、何とも大胆不敵な小説家と言える。
きっと、その年の他の受賞者は泣いただろうな。
でも、気づいてみれば、たわいないことでも、それまでこういう小説?を書いた人はいなかった、いても大した完成度ではなかったのだから、天才とはこういう人のことを云うのかも知れない。
要するに、かくも文章とはグラフィカルなものだという認識をもってほしい。

横道にそれた。
話を戻すと、難しい説明は会話の中でするといい。
話し言葉だと意外にすらすらとややこしい説明も、頭の中にすんなり入りやすいのだ。
その他に、同じ表現を使わない、というのも重要。
上の文章で云えば、 「難しい」「ややこしい」と微妙に表現を変えている。
語尾もなるべくなら変える。
例を挙げれば、「・・・かもしれない」「・・・である」「・・違ってくる」「・・・方がいい」「・・・かもしれない」(いかん、重複しているよ!)
「・・がある」「・・のもいい」「・・・のだ」「・・も重要」「・・いる」
という具合になる。
僕の場合は、半ば無意識なのだが、意識的にバラエティに富んだ表現を心がけると感じがよくなる。

ま、haruoさんをネタにして好き勝手に書きましたが、読者にスイスイ読ませる方法、技術について書いてみました。
参考になればいいが。

それと、とにかく、技術的には書き続けているうちにどんどん上手くなりますので、中身とアイデアはその人間そのものが出てしまう、恐ろしいメディアであります。
小説を良くするために、実は書く以前に勝負が決まってしまうということを肝に命じて、経験を積んで、教養、人格などを磨きましょう。
というわけです。

                                             






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