【解説】 d-planさん「アベル症候群」について アベルというのは、聖書に出てくるカインの弟で、アダムとイヴの次男である。 神がカインの農作物より、アベルの羊の供物を喜んだので、兄によって殺害さ れたという。 その辺のエピソードを下敷きにしたタイトルだと思います。 この作品、少し危険な香りがします。 誰もが連想するのは、最近の一連の少年犯罪のことでしょう。 そう、まるでその少年たちの心理状態を表しているような小説、そんな印象を もつかもしれません。 そういう意味で、この小説は確実に「時代の空気」を反映しています。 生の実感のなさ、退屈さ、些細なことで傷つく心、やり場のない想い、殺意、 夢、幻、幸福、恐怖、そして、存在の儚さ…。 人は何のために生きるのか。 何か確かなものを実感したい。 そんな鮮烈な体験を得るために、人は人を殺すのかも知れません。 これはそんな物語です。 悲しくも切なくなる物語です。 彼らの存在に、神の祝福を祈らずにはいられません。 儚い存在である人は、一体、何のために生まれてくるのでしょう。 |