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▼ 第16回投稿作品 ▼



宇宙大冒険シリーズ第一弾火星編

「マーズINA」計画

2077年4月1日火曜日
1972年『バイキング』が火星に着陸してからすでに一世紀が経過していた。その間に
1997年7月4日、『マーズ・パスファインダー』が再び火星着陸に成功、『マーズグ
ローバル・サーベイヤー』、『のぞみ』、『マーズ・サーベイヤー1998』、『マーズ
・サーベイヤー2001』など、続々と数々の火星探査計画が進行し、何台もの火星探査
機が送り込まれた、しかし、一向に火星はその正体を現さなかった。地球に最も近い
惑星でありながらもその姿はいまだ持って謎のままであった。人類が宇宙に足がかり
を付けるのに、まず火星を攻略しないと何も始まらない。
少し衰えを見せていたがまだ、世界の宇宙開発の実績が最も高く、その秘められた
データーも最も多いアメリカ地区が中心となり地球連邦政府の一大プロジェクト
「マーズINA」が始まったのは、2054年5月6日であった。その10年後の2064年8月
13 日高性能の探査機が火星の両極と他の6個所に同時着陸した、これによって、火星
のベールは取り払われるはずだった・・しかし・・
その2台が通信不良、残りの2台は地質学的資料を送り続けた、残りの4台は原因不明
のコントロール不能に陥った。わずかにデーターを送り続けている2台も、今まで得
られているデーター以上のものは何も送ってこなかった。この失敗で立場をなくした
「マーズINA」計画最高責任者「マイケル・J・カプリコット」は、責任を取って解
任するのを逃れる為、苦し紛れに、人間の火星着陸計画を発表した。カプリコット
は、火星に人類が着陸するのに必要なすべての資料は揃ったと明言し、そして・・今
回のこの無謀な火星探検隊が組織実行されることになった。
専門家の宇宙飛行士は、各方面からもれてくるこのずさんな計画に参加しようとはし
なかった。そこで一般公募によって、着陸隊員3名が選ばれた、専門の宇宙飛行士達
は、火星の軌道上まで行き、母船で待機することで納得した。
3名は、カーク・H・ダグラス、論π、葉山辰男、の3人に決まった。彼らの経歴は何
も問われなかった、しいて言えば人間でさえあれば誰でも良かった。カークがくじ引
きで着陸船の船長に決まった。彼は子供の頃から宇宙船に乗ることが夢だった、自分
と同じ名前のヒーローの登場する古いSFビデオをおじいさんにいつも見せてもらっ
ていたからだ。論πは、出生も生い立ちも不明、と言うより自分でも知らないのだ、
ただ、何処の誰とでも意思疎通が出来ると言う特技を持っていた。そして、葉山辰
男、彼はこの中では素性も目的も一番はっきりとしていた、日本地区のドウトンボリ
自治区の住人で売れない漫才師だった。かれは、時々お世話になっている師匠に紹介
されて、某テレビ曲のプロジューサーに会った。そして、今回の有人探査機に乗り込
みスクープを問ってくるのが仕事であった、しかし、失敗した時のことを恐れた局
が、成功した時のみ素性を明かすと言う条件付きで目的を隠して応募したのであっ
た。
この計画が実行始まってまもなく、マイケル・J・カプリコットは、多額の退職金を
手にして円満に退職し、その後を、部下のアトーツ・G・Uが引き継いだ。かれも、
この計画がヤバイのを知っていたが、自分の在任中には実施しないだろうと思って後
を継いだ、しかし、世界の期待は高く、計画は着着と進んだ。
2077年すでに、火星に行くのにまったく技術的な問題はなかった。失敗の可能性は小
数点以下6っ桁ぐらいだった。
その様な時期に、いまだに解明されない火星にただならぬ恐れがあったのだ、実はそ
の以前にすでに木星には有人探査機が降り立っていたのだ、ではなぜ・・火星が・・
そこにはこれから解き明かされる火星の神秘があった。

 2078年4月20日
地球を出て約1年、母船は火星軌道上に有った、「イタチノヘ」と呼ばれる平坦な地
点が着陸の目標地であった。
予想どうり、いとも簡単に着陸船は火星に静止した、これまで、数多く送り込まれた
探査機同様、ここまでは何の問題もなかったのだ。カークは船長として、着陸船に残
り論πと葉山辰男が防護服に身を包み船外に降り立った。葉山は隠し持ったカメラと
録音ディスクに記録を始めた、コメント「この一歩は漫才師にとっては小さな一歩だ
が、タレントにとっては大きな一歩である…」・・何処かで聞いたようなセリフだっ
た。
いきなり二人の体が凍った・・と言ってもこの灼熱の火星である、心臓が凍ったと表
現すべきだろう。それまで、砂と岩石に覆われた火星と言うデーターしかどの探査機
も送ってこなかった、しかし、目の前に有るのは、少し茶色がかってはいるが、まさ
しく緑の大地、それも農耕地であった。着陸船が降り立ったのは、畑の真ん中であっ
た。
少し離れたところに大きな家があった、きっと火星人が居るはずである。
論と葉山が近寄ると中から白い服を着た「人間」が現れた、確かにその姿は「人間」
だった。地球人と何ら変らない服装も、少し時代の古い日本人なら誰でもが見てい
た、白いエプロン、日本語で言うと割烹着であった。家からでてきたのは地球人であ
れば、女性と思われるそれも中年の女性であった。葉山は自分の育ったドウトンボリ
自治区の方言でおもわずつぶやいた「おばはんやがな!」すると、その火星人はすか
さず、「だれがおばはんやねん」とテレパシーを送ってきた、心はすべて読まれてい
たのだ。
論はすぐそのドウトンボリ自治区の言葉になれた、「すんまへんな急にお邪魔しまし
て・・」論は、何事もまず謝っとけば角が立たないことを知っていた。
論「始めまして、わてら地球から来ましてん、よろしゅうに・・」
火星人「そんなん聞かんんでも分かってます。いずれはあほな地球人が降りてきよ
るって昨日のニュースでやってました。」
論「ニュースやってまんのか?」
火星人「下手な大阪弁やめましょ。大阪弁のテレパシーやってると疲れます。それ
に、そんな防護服なんか来てるからテレパシーでしか話せないでしょ。はやくヘル
メットぬぎなさい」
葉山「そ、そんな事したら死んでしまいます。」
火星人「死ぬ訳ないでしょ、私も何もかぶってなくて大丈夫なんですから」
葉山「そらあんたが火星人やから・・」
火星人「何にも分かってないね、火星人も地球人も同じです。あんたも標準語で話し
なさい、 うっとしい」
葉山「うっとしい、は標準語ですか?」
火星人「揚げ足とらんように!」
論「葉山!ヘルメット脱いでも大丈夫みたいですよ」
葉山「あ!ほんとや」「あ!ほんまです。」(標準語にならない葉山であった)
葉山「何かきつねにつままれたみたいやな???」
火星人「そうでしょうね、あなたたちが来るまで地球への情報操作は完璧だったので
すから」
論「情報操作?」
火星人「そうよ、元々アルファーケンタウリの近くにあるエデン星から私達はこの太
陽系にやってきたのよ、地球人の祖先と火星人の祖先は同じだったの、でも、その子
供が兄弟喧嘩して火星と地球に別れて住むようになったの、どこかで地球の昔話を聞
いたことあるでしょ、狩猟民族のカインが農耕民族の弟アベルを殺したとか、海幸彦
山幸彦の話とか、兄弟喧嘩の民話は地球上にたくさん有るはずよ。それは、実は地球
人と火星人の話がモデルだったのよ。
葉山「君島家の話も?」
論「それは違うだろ!!」
火星人「それはそうと、あなたたち早く舟に戻って帰らないと危ないわよ、」
論「どうして?」
火星人「どうしてって、今まで何回も探査機が着陸してどうなったか知ってるで
しょ、みんな破壊されるか、改造されて、火星の捏造されたデーターだけが送られて
いったでしょ。あなたたちが火星の秘密を知った初めての地球人よ、火星人は、温厚
な人ばかりだから、殺しはしないと思うけど、記憶の改造とか、死んだことにして、
火星から出さないって事は有り得るわよ。」
葉山「そ、そんな、・・あなたはそうじゃないのに・・」
火星人「私は、時々地球に遊びに行っていたから、地球人びいきなのよ」
論「え!!本当ですか???」
火星人「本当よ、普通はばれないように行ってるけど、たまにばれたのがUFOとか
言って報道されるのよね、昔は、かぐや姫とか月光仮面とか月から来たって事でごま
かしたけど、・・」
葉山「じゃあ、あれは火星人が…」
火星人「ああ!!ほら、来ちゃったじゃないの!!隠れて!!」
葉山「うううんんん、これは大スクープだこれを持って帰れば、猿岩石よりはビッグ
になれるぞ!!」
論「それよりカークに連絡して離陸の準備をさせよう!!」
葉山「そうだ!地球に帰れないとスクープもスープも駄目になってしまう。」
論「お前が売れない漫才師だって今よく分かったよ・・」
葉山「有り難う、おお!カークと無線がつながったぞ!!」
カーク「そちらの状況はどうした、まったく連絡がないので心配したぞ!!これから
は細かく報告を入れろ。」
葉山「分かりました、テレビ中継は??」
カーク「電波が乱されて中継は不可能だ!!しかし、交信記録は残る!!なんでも良
いからひたすら報告しろ!!」
葉山「分かりました、まず、火星人に女に会いました!!」
カーク「ななな!!何!!本当か、どんな格好だ、?」
葉山「地球人と同じです、ただ、白い割烹着を着ていました。」
カーク「そうか、予想どうりだ!!!」
葉山「どうして船長はそんな事が予想できたのですか???」
カーク「昔おじいさんから聞いた、火星にはエプロン姿で家の掃除や手伝いをする女
の人がいるだろうと、」
葉山「本当ですか!!すごいおじいさんだ!!」
カーク「そうだ、おじいさんは、その女の人を『火星婦』って呼んでいた。」
葉山「もしかして、船長のおじいさんは……」
カーク「そうだ!!おじいさんはヨシモト人だった!!」
葉山「やっぱり」
カーク「その火星人はめがねをかけていないか、?」
葉山「子供の頃はかけていたそうです、勉強のし過ぎで近視になっていたそうです」
カーク「そうだろう、その事も予想どうりだ!!」
葉山「どうして分かるんですか?」
カーク「おじいさんが言っていた。火星人は近視が多い『火星近視』と言うのだ」
葉山「どおおおお!!!。おっと向こうからたくさんの人が押し寄せてきます。」
カーク「それも予想済みだ、『加勢』に来たのだ、気を付けろ」
葉山「どの様に攻めてくるのでしょうか??船長」
カーク「一気に攻めてくるはずだ『一気呵成』と言うのだ!!」
葉山「ああ!!もう喉がからからです、少し水を飲みます。」
カーク「や!や!やめろおおおおおお!!!!」
葉山「どうしてですか、?」
カーク「火星人が飲んでるのは、水ではない,NaHoつまり水酸化ナトリュウムだ !!!」
葉山「水酸化ナトリュウム??」
カーク「そうだ!!『苛性ソーダー』って言ううんだ!!」
葉山「そ!そんなものを飲んでいるのですか??それなら食べているのもとんでもな
いものか?」
論「葉山!火星人の食べた後の空が残っている、これはまさしくピーナッツじゃない
か、カロリーが高くて栄養がたっぷり、分かった『落花生』だったんだ!!」
葉山「だが、不思議だ、どうして火星には女しかいない??」
論「たぶん、何処かで『稼いでいる』んだろう。」
葉山「あのマラソンの双子の兄弟がいる会社か?」
論「きっとそうにちがいない『旭化成』だろう」
葉山「こんなとこに実在の企業名を出して良いのか?」
論「こんな作品読んでるのは、その程度の人間だから、クレームなんて来ないよ」
葉山「そんな事より早く着陸船に戻ろう」

 二人は、見渡すばかりのピーナッツ畑を転げるようにカークの待つ着陸船までたど
りついた、
一瞬の差でハッチは閉められ、辛くも3人は想像を絶する火星の世界から逃げる事が
出来た。
母船へ戻った3人は何事もしゃべらなかった。地球に戻ってからでも、3人が真実の火
星を話すことはなかった、それは、彼らが臆病で火星人の仕返しを恐れた為ではな
かった。
恐れたのは、真実を話した時の地球人の反応だ、地球では何千年も前から火星人に
よって情報操作が行われ、火星人はおろか、宇宙人やUFOすら非科学的とか言って
その存在を否定する、世論や常識が形成されていた。そんな地球で、3人が見た火星
の真実を語ることが出来るだろうか?
ただ、一人葉山だけは、語り続けた、
「火星には家政婦が居ます。苛性ソウダー飲んで、落花生食べてます。」…・・
しかし、それは真実としては受け入れられず、漫才のネタとして受け入れられただけ
であった。いつ火星の真実が地球人に明らかにされるのだろうか?それは、起こり得
ないこととしか思えない。
「マーズINA」計画はこのようにして終わりを告げた、以後火星は人類に何の益も
もたらさない星として、近くにありながら、誰も関心を持たない星になってしまっ
た。
しかし、火星人はその事により平安な生活を送り地球の良くない文明にさらされるこ
となく平和に過ごした。
「マーズINA」計画、それは地球人にとっては「まずいな・・」計画であり、火星
人にとっては「マーズ良いな」計画であった。






                      2000.4.2


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